diary-sentencesのブログ

日々たらたらと小話的な物語的なのを書きます。

第四話 秘書 芳田

私は秘書だ。どんな方の秘書をしているかは言えないことになっている。私の名前は芳川。よしかわと読む。吉川ではない。よく書き間違えられる。24歳までは書き間違えられる度にイライラしていたが、そんなことに脳みそを使ってしまうのは勿体ないと気づき、イライラするのをやめた。私は某有名私立大学を首席卒業している。たまたまなどではない。確実に私の実力だ。秀、以外で単位を取得したことは無いし、資格は1年に15個数取得していた。私がなぜ秘書をしているかというと、私は容姿が良いからだ。スタイルはよく足も長い。黒髪にメガネが良く似合う私は秘書に向いていると思った。もちろん業務も最高水準でこなしている。日本一の秘書を選ぶコンペティションでは日本1位になった。なにも障害のない人生を送っている。結婚はしていない。私よりも能力や知能の低い男のためにプライベートを開示するなんて考えられないから結婚していない。彼氏はいる。常にいる。65日間で別れることにしている。たいていの男は自分の無知を隠し通そうとするが65日ほど経つと化けの皮が剥がれる。というか剥がれてしまう。私は別に人よりも優れたいわけではない。それなのに優位に立ってしまう。それだけが私の人生の障害かとも思っていたが、世間一般的にはそんなことなさそうなので、そんなことないと思うことにした。

 

そんな私につい最近、障害になりかねない出来事が起きた。

 

妹の束子が結婚したことだ。たばこという名前だ。彼女もよく名前を読み間違えられる。それはおいておいて、なぜ束子の結婚が私にとって障害になるか。それは父の存在だ。父は私に、早く結婚しなさいと言い続けている。私は一人暮らしをしているので実家に顔を出す度に言われる。しかしそれだけではない。スマートフォンの普及が進んだせいで父もスマートフォンを持つようになり、メッセージアプリでも結婚しろといってくる。結婚しろというスタンプがあるらしく、それを駆使して伝えてくることがある。そんな父は、妹が結婚したことでさらに私に結婚を促してくることだ。憂鬱だ。相手がいないから結婚していないだけなのに。

 

しかし、父の言い分にも納得してあげないとなとも思っている。それは母の存在があるからだ。母は私に優しいフリをしてくる。フリをしてくるというか、直接何も言ってこないのだ。特にやましい理由がある訳ではなく、単に私が優れすぎているから何も言えないらしい。だから言いたいことは父を介して伝えてくる。そして父は母に弱い。私には弱気な母は父に対して強い。まだ私が小さい時に、父の夕飯が冷奴だけというのが3週間続いたことがあった。何をしたのかは追求しなかったが。

 

しかし、母の気持ちも分かる。それは弟の存在があるからだ。弟は私の一つ下。私がこの世で唯一、私よりも容姿が優れていると思う女性と結婚した。モデルだ。パリコレ1回の出演でランウェイを95往復する。そんな弟の嫁は私と仲良くしたいらしい。しかし、自分の容姿が良いことを自覚している人間同士なので相手の人間性が疑わしいのだ。私は別に性格は悪くないと思っている。しかし、人よりも優れすぎている人は性格がひねくれることがよくある。その理論がお互いに適用されるのではないか、という不安があるため、弟の嫁は私と仲良くしにくいらしい。そこで嫁に溺愛してる弟は、私に旦那が出来たら、4人で会食をしたいらしい。私と弟夫婦だけではどうしても、雰囲気が盛り上がらない。そう。内弁慶な嫁の存在によって、私の結婚を促されている弟は、弟に甘い母に対して私の結婚を促しているようだ。

 

完璧に育ってしまったが故なのか。少しは自分を劣ってみせるために秘書をやめようか。秘書という職務が人よりも優れて見られる。しかし、秘書という職務には満足している。それなりに楽しいし、仕事に対しての対価も満足している。

 

やはり人生の障害ができてしまったようだ。

しかし私は優れすぎているから、どうせこの障害も無くなってしまうのだろう、、、。

 

・・・続く。