第二十七話 夜の公園
西暦何年なのかは分からない。
ただ技術は他方にわたり進化し続け、接客業というものまでがソレに代替されるようになった。
この街で1番大きな公園の門にも、女性の見た目をしたロボットが立っている。
センサーがついており、目の前に人がいると感知すると「ようこそ、いらっしゃいませ」と綺麗な日本語を話し、客を歓迎する。
大きな池ではボートに乗れたり、鯉に餌をあげられる。四季それぞれで美しい花が咲き誇り、カメラを持った客達も多い。入場するだけで金のかかる公園なのだ。営業時間は20:00まで。今日も閉園ともに客たちは帰路につき、夜になればそこに人影はない。
ただ、防水の女性型ロボットは置きっぱなしにされる。事故で車に追突されても大丈夫なように頑丈に作られているし、火事で燃えてしまわぬような加工もしてある。体内で発電し、自分でエネルギーをまかなえる機械なのだ。
違和感のない動きをする割には、男が3人がかりでも持ち上げられない重さを持っており盗難されることも無い。
C惑星の住民達は、地球という星の存在を知り、人間に興味を持った。興味を持った理由は地球を我がものにしようと企んでいるから。だから彼らは夜と定義される、人間の活動量も少なく、暗さで視界も良好ではない時間を狙って人間という生物を捕えC惑星に持ち帰り、研究することで弱点を得ようとしていた。
C惑星の住民達は夜の公園の門の前に立つ人間らしき影を見つけ、そこに近づいた。
「おい、お前は人間という生物か。」
「ようこそ、いらっしゃいませ」
「なんだこいつ。見慣れない我らに対して何も動揺しないのか。人間という生き物はあなどれないかもしれないな。」
「本日はご来園ありがとうございます。」
「なんだこいつ。まあいいか。」
「我らは人間という生物を知るために、この地球にやってきた。申し訳ないがお前を捕えさせてもらう。」
「只今の季節は、チューリップが素敵に咲いておりますよ」
「なんだこいつ。まあいいか。」
こうしてC惑星の住民達は、女性型ロボットを捕らえた。はじめはロボットの重さに動揺したが、彼らの計り知れない力で難なく持ち上げて飛行船へと連れ込んだ。
「博士、人間という生物を持ち帰りました。どうぞ研究してください」
「ああ、助かる。これで人間の弱点を知ることが出来るな。結果は2日後に分かる。また来てくれ。」
2日が経った。地球では女性型ロボットがいなくなったことがニュースになり騒がれていた。
「博士、人間の弱点はどうでしたか?」
「そ、それなんだが、こいつらは今の我々では攻略することはまだ出来なそうだ。」
「何でですか博士!?」
「こいつらは体内で電気を作り出しているし、その装置自体、液体をかけても壊れない。熱にも強い皮膚でおおわれていて、いくら叩いてもへこみもしない。毒ガスをかけてみても全く効果がない。こいつらは我々と同じように大気の何かを体内に入れエネルギーに変化するというプロセスを持っていないようだ。人間を攻略したいのなら我々の技術がもっと進まなければならない。」
「それは本当ですか博士、、。ではまず我々を強化するためにこの惑星の住民を捕らえてきて改造しましょう。」
「そうすることにしよう。」
西暦何年なのかは分からない。
女性型ロボットの発明者は、意外にもその道の専門家ではない。彼の専門は地球防衛。他惑星生物からの地球侵略を防ぐための研究している。
助手から女性型ロボットがいなくなったということを聞き、彼はこう話したという。
「これで8体目だな、いなくなったのは。それだけ地球が他惑星たちから狙われているという事だ。しかしこれだけ連れ去られても地球が平和であるのは、住民達のレベルの差だな。人間という生物には非科学的能力はなくとも、知恵がある。」