第三十七話 スターズ
煙草
「あ、あの煙草一本もらえる?」
「あ、すみません。僕もさっき他の人からいただいたものでして・・・手持ちはないです。」
「なんだこのガキ!ニコチン依存者め!!!」
何だあの親父。ただ俺は煙草をあげたくないから嘘ついただけなのに。
門限
よく行くバーの帰り道。道路の向こうに車が止まってそこから急いで若い女の子が降りてくるもんだから、彼氏の家にでもいて門限ギリギリなのかなと思った。
その女の子は道路の向こうにある銀行の駐輪場に停めてあった自転車のカギをポッケからだし自転車を押して車に向かった。
ああ、ただ置き去りにしていた自転車を親と取りに来ただけか。
サングラス
服屋でサングラスを買った。2,980円。定職につかないオレからすれば大きな出費だ。最近はカンカン照りの日が続き、ママチャリに乗っていても前が見ずらい。
次の日、サングラスをかけてママチャリに乗ってハローワークに向かった。やっとのことで仕事を見つけることができた。
次の日から、自宅で封筒にチラシを入れ込む仕事を始めた。
監視
従業員がしっかり働いているかを監視する仕事の者がいた。監視役の監視をする上の役職の者がいた。上の役職の者は社長から監視されている。社長は株主から監視されている。
人間を監視する神様がいた。神様は一人では足りないので複数いた。しかし怠けて仕事をしない神様も出てくるものだから、神様を監視する神様もいた。
誰だって周りの目を気にせずにはいられない。
朝ごはん
休みの日は昼前に起きて最寄りのコンビニに行きおにぎりを買って食べた。
平日は家を出るぎりぎりまで寝ていた。
冬になって俺は毎朝、自宅でご飯を食べるようになった。
起きる頃には台所から心地よい音がする。
そっちの方が高くつくのに、そっちの方が幸せだ。
エンドロール
僕らは立ち止まることなんてないさ。誰かにひかれたレールの上を進みたくない。
誰だって物語の主人公で、自分の進む道を進んでいるんだ。あの映画みたいに。
僕らの人生は物語だ。それぞれのストーリーがある。誰かの真似をしなくていい。
映画だって物語だって、人が考えたものなのに。