diary-sentencesのブログ

日々たらたらと小話的な物語的なのを書きます。

第三十六話 輪

私はこの春に何とか志望する大学に入学することができた。

大学に入学したと同時に新しいことを始めようと思い、寝る前に日記をつけることにした。大体書き始めは気候や季節のことを書いてしまう癖があることに気づいた。

 

外に出るだけで嫌になるような暑さはもう過ぎた頃。

 

私は悩んでいた。

自分のキャラクターが分からなくなってしまった。

あ、病んでいるわけではない。

ただ、自分の所属するいくつかのコミュニティにおいての、私の立ち位置や振る舞い方がわからなくなってしまった。

 

まずはいつもともに講義を受ける友人たちとのコミュニティ。大抵、私含め4人で行動することが多い。このコミュニティにおいての悩みの規模はかなり小さい。というよりもほぼない。私はもとより、本当に気の合う人や、同じ世界観やセンスをもっている人としか友人関係というコミュニティを作らない。せっかく友人といるのに無駄な気を使ったり、自分に嘘をついてまでふるまうなんて考えられないからだ。特に余計なストレスを感じることなく過ごしている。

 

次は、サークルというコミュニティ。私は写真サークルに入っている。大学に入ったと同時に何か新しいこと始めようという意識から、カメラを選んだ。思ったよりも熱中していて楽しい時間を過ごしている。

しかし、悩みが一つ。このサークルは規模が小さく、二年生の先輩が3人。同級生が3人という規模の小ささ。ここでで厄介なことが一つ。このサークルでは規模が小さいことから各学年一人ずつの幹事を選任しなければならない。二年生の幹事は、情熱的でこのサークルをもっと大きくしていくぞと意気込んでいる先輩。しかし周りの学生からの熱い支持を得ているわけではなく、一人で突っ走っているような状態だ。悪いとは思わない。実際にその先輩がいるからこそ豊富なイベントが用意されるし、他大学との交流も多い。

しかし問題がある。それは私が一年生の幹事になってしまったことだ。幹事になること自体に嫌悪感はない。高校の頃は学級委員を毎年していたし、所属していた部活でも三年生の時には部長をしていた。ただ、私の幹事、いわゆるリーダーとしての立ち振る舞い方は先輩幹事のそれとは違う。だからこそ、自分がどこまで関与していいのかもわからないし、どこまでなら周りの学生と同じような意識で活動していいか分からない。

 

最後は、ゼミというものだ。一年生の後期からゼミというものに所属することになる。運よく私は何かしらのリーダーにも、係長にも選ばれていない。しかし、悩みはある。自分の存在の仕方が分からない。大人しく影薄く過ごしてほしいとリーダーたちから思われているのか、もう少しかかわってきてよと思われているのか、もしくは数でいえばマイノリティの各リーダーの意見とは対極になるような思想を、マジョリティのゼミ生たちが持っているのではないかと思うと、アクションするのが少し怖い。きっと私だけではなく、誰しもがコミュニティにおいて嫌われることや厄介者とされることを恐れている。だからなかなか皆何も行動しない。それによってなんとも仲良く見えて、実は何とも言えない空気感が流れ続けている。

 

サークルとゼミのコミュニティにおいて共通しての悩みは、充実したコミュニティ形成を急ぐかどうか。きっと人間関係だから、突拍子もなく炎上するし、冷めるし、細分化される。けどそれを待っていていいのか。待たずに行動してみれば衝突することはあっても、待って成ったコミュニティよりも充実したものになるんじゃないか。しかし私がそのアクションを起こすべきなのかと悩んでいる。何も分からないから悩んでいるわけではなく、もう周りのみんなのことは大体わかったからこその悩みだ。

ただ、自分はみんなのことを分かっているけど、私がどう思われているかどうかは分からない。だからアクション出来ない。しかも、気の合うメンバーだからこのコミュニティに属しているわけではないってところも厄介だ。

けどきっと私ってそういうアクションを起こすべき人なんだよなーと思っている。はあ、誰かがしてくれないかな。

 

ああ、明日は朝からゼミのある日じゃないか。

 

何かこんな日記を書いていたら、頭を使ってしまった。早く寝よう。

 

お、結構ぎりぎりの時間に起きてしまった。急ごう。

 

「じゃあ、今日のゼミは終わります。来週までにしっかり課題出せよー。」

 

 

「ちょっと皆ー!」

 

せっかく先生が早めにゼミを終わらせたのに、私は皆を呼び止めてしまった。

 

「もっとお互いのことを知るために今日の夜、良かったらみんなで飲みにいかない??」

 

教室がざわついた。あ、いい意味でだ。いいね、とか、行きたいという声が聞こえた。

 

「こら、お前らまだ19歳がほとんどだろ。ノンアルにしろよ。」

 

『あははは』

ゼミの先生の一声で教室の雰囲気はさらに明るくなった。

 

今日の夜でちょっとは前に進めたらいいな。