diary-sentencesのブログ

日々たらたらと小話的な物語的なのを書きます。

第八話 白なんだゼ

 

とろりと溶けて、びよーんと伸びる??

あんな塩分を多く含んだ加工食品に人が群がるなんて

考えられないゼ。

 

もちもちの食感と、ティーの甘さ??

あんな外国からの刺客に影響を受けてしまう人間なんてどうかしてるゼ。

 

日本人は黙ってオレたちを食えばいいんだよ。

今でもひっそりと存在し続けてるのになんなんだ人間。

 

ニンニクにマヨネーズだと??

そんな高カロリー、強い匂いのもんなんか食っちゃうなんておかしいゼ。

 

いくら?鮭のハラミ?唐揚げ?チキン南蛮?

ふざけんな、だったら定食食べろって話だゼ。

 

そう。オレたちは塩むすび

昔から日本人の腹を満たし続けてきたのは

オレたちだゼ。

 

江戸の城下町で着物を身につけた娘が、風呂敷で包んだ弁当箱に入れてたとのは塩むすびじゃないか。

 

それなのに今の人間たちといえば、日本人のくせにパスタ食ったり、ケーキ食ったり、ナン食ったりしやがって。日本人であることに誇りはないのか!

 

いまから40年も前はお弁当には塩むすびって決まってたゼ。ちょっと豪華な日は俺たちの中に梅干しが入ってるんだ。

 

それなのに今じゃ、ふざけた具ばっかり入れやがって。コンビニがおにぎりを安売りするから悪いんだぜ。

 

けどオレたちは今でも売り場に陳列されてるぜ。スーパーのおにぎりコーナーでも、コンビニのおにぎりコーナーでもオレたちは在り続けてるゼ。客の中には毎回、オレたち塩むすびしか買っていかないやつもいるゼ。あーゆー奴らはやっぱり分かってるな。日本の食文化を分かってるぜ。

 

少なくともオレたち塩むすびが無くなってしまったら悲しむ奴らはいるってことだぜ。

しかしオレたちは無くならねえ。在り続ける。この世に、米と塩がある限り存在し続けられる。

ツナマヨおにぎりはもしかしたらなくなるかもしれないんだゼ?ツナマヨが世界的ブームを起こしてしまって、この世からツナの原料の魚達がいなくなってしまう、もしくはその捕獲を制限されるようになれば安価でツナマヨおにぎりを売れなくなる。それどころか生産できなくなるかもしれない。他の具だってそうだゼ。なくなる可能性を秘めている。

だが、オレたちはその可能性がない。パンやパスタっていう炭水化物が登場しているにも関わらず、オレたちが生き残ってることで分かるだろう。

そう。米っていうのはすごいんだゼ。

 

そうだそうだ。今更だけど今日はお前らに、オレたちの自己紹介をしてやろうと思ったんだった。

 

名前は塩むすびだ。あだ名は塩おにぎり。このあだ名は、「お」が連続するから言いにくらいらしく、そこまで浸透していない。塩むすびって言う方が人間は楽らしいゼ。

 

好きな奴は味噌汁と漬物だな。あいつらはいいやつだ。よく食卓に一緒に並ぶんだ。一緒に並んだとしてもアイツらはオレたちを引き立てることに努めてくれる。だからオレたちもアイツらの味を生かすような味になろうと頑張れるんだゼ?それに比べて焼き魚とかは最低だな。オレたちが主食なのに、主役になろうとしやがる。ふざけやがって。

 

あと、嫌いな奴の代表格と言えば、海苔だな。あいつらはナメてる。しばしばオレたちはアイツらに巻かれるんだが苦痛でしかない。塩むすびっていってんだからほかの要素を付け足すなって感じだゼ。そんなに海苔が食いたいんだったら、漬物と同じポジショニングで食卓に並べろ。

 

食べ物じゃないオレたちの仲間はおばあちゃんだ。そう、おばあちゃんだ。アイツらはホントにいいやつだゼ。鮭とか、おかかとか、高菜とか、野沢菜とか、たくさん具のバリエーションがある中で、しっかりオレたちの存在を忘れていない。しかもアイツらは良い塩加減を知ってる。更に、アイツらはオレたちの魅力を後世に伝えようとしてくれる。孫にオレたちを作ってやってくれるんだ。あんなにいいヤツらいないゼ。

 

最近の敵は、糖質制限ダイエットだな。ふざけやがって。糖質を制限するってなんやねん。しかもソレが流行ってるだと?日本人辞めるのかソイツら。毎日コンビニでオレたち塩むすびを買って行ってた男が、最近オレたちじゃなくて少し離れた棚のサラダチキンとやらを買っていくようになった。となりのネギトロ巻きの話によると糖質制限ダイエットの影響らしいんだゼ。これはもはやオレたち塩むすびへの影響というか、おにぎり業界にとっての大問題だ。来週、福岡で行われるRBG20(Rice Ball Group of twenty)では確実に取り上げられる問題だろう。

 

すまん。喋りすぎたな。

 

 

だが実は、こんなオレたちも実は気になるヤツが現れたんだ。そう、タイ米さ。あのスラッとしたボディに、健康的な色、少し尖った先端に色気を感じるんだ。ぜひ、いつかタイ米とコラボして塩むすびになりたいところなんだゼ。

 

おっと、客がオレたちを買おうとしている。

さ!今日も人間の胃袋を満たして、幸せにしてくるゼ。

 

またな!