第二十三話 第二十四話 悩み
斯くして住宅街の一角にあるカフェのファンになった俺は休みの度にそこへ足を運んでいた。
今日もブラームスが脇役として店内の雰囲気を装飾し、シックな内装により趣を出す。
店内では常連客とカフェのマスターの会話が今日も盛り上がっている。常連と見られる客の中にはまだ俺は見かけたことの無い者もいる。それはそうだ。まだこの店に来るのは2回目なんだから。
前回、マスターの理想の愛が俺の理想としているものなのかもしれないと気付いてから、もっとマスターの話を聞きたくなった。それで今日も足を運んでいる。
客たちとマスターの会話に耳を傾ければ、すぐに内容が入ってくる。
「同じ大学のいつも一緒にいるやつに裏切られたんすよ。」
この店には似合わない雰囲気の男子大学生が、ほかの客に話しかけていた。
「あらあ、何があったの??」
マスターにはっちゃんと呼ばれていた客が聞き返す。
「それがですね、これといってはないんですけど。ここはおれを大事にしてくれる場面でしょ!ってところでそうじゃなかったりするんですよ。一緒にいてくれなかったりとか、誘っても乗ってくれなかったりとか。」
「ああ、なるほどね〜。難しいわよね友人関係も。自分の思う通りにはいかないしね〜。」
おっと、まだ人として若いのかなこの大学生は。と思ったのが正直なところ。それはそうだ。友達はあくまで友達であって、各自好きなように行動するさ。それに本当に友達とよべるような関係なのか??上辺だけなんじゃないか?
と、カフェにいる大人たちは思ったはず。俺もそう思った。
こんな悩み相談をされたら返事に困るな〜。
「そうなんですよ。友達のことで悩むのも大切かなとは思うから嫌ではないんですけど、、、。」
「マスターはどう思いますか??」
あら、今日も聞かれてしまったマスター。なんとも答えにくいだろうな。そもそも本当はどんな友人関係を築いているのかも分からないし、どのくらい本気でこの大学生が悩んでるのかも分からない。そもそも悩むことなのか??しかしそんなこと言えないか。
質問をふられたマスターは、ミルを回す手を止めて一呼吸置いてから答えた。
「心の中の天気の話をしますね。
見上げてみてください。傘が要るほどの雨じゃないです。それに、雨に濡れたって死ぬわけじゃないですよ。」
「た、たしかに、そうですよねマスター。」
「はい。楽しく、晴れ渡る人生を進みましょうよ。」
すごいなマスター。今日もお客さんの悩みを一言で解決した。いや解決したとは言えないし、どれほどお客さんに届いているかは定かではないが、俺があんなふうに言われたらきっと心の雲も晴れてるだろうな。
もう歳をとって若い頃の気持ちも忘れていたけど
好きなように生きたっていいじゃないかってことか。