diary-sentencesのブログ

日々たらたらと小話的な物語的なのを書きます。

第十四話 ヨシオ

ヨシオは僕のクラスメイト。

 

僕は小学四年生。

 

小さな小学校に通っているんだ。

 

全校生徒は70人くらい。

 

だから三年生と四年生はおんなじ教室で授業をしている。

 

僕は音楽の授業が大好きなんだ。

 

特にリコーダーを吹くのが好き。

 

なんでか気持ちがワクワクするんだ。

 

ヨシオも音楽の授業が好きみたい。

 

それにリコーダーを吹くのがヨシオは得意なんだ。

 

実はヨシオは三年生なんだ。

 

だから僕とヨシオは一緒に小学校を卒業できないんだ。

 

僕は同じ学年にも友達がいるけど

 

ヨシオはあんまり他の三年生と仲良くできていないみたい。

 

僕はヨシオのことを大親友だと思っている。

 

家が近いから毎日二人で登校している。

 

ヨシオは勉強が苦手だから僕が教えてあげたりしている。

 

今日もヨシオと一緒に帰るから正門でヨシオを待っている。

 

そしたらヨシオが泣きながら出てきたんだ。

 

どうしたのか聞いたら、

 

同級生にからかわれたらしいんだ。

 

ヨシオは僕たちとはちょっと違うところがある。

 

今でも、漢字をなかなか使えないし、カタカナだっていまいちなんだ。

 

片付けが苦手で、よく引き出しの中が散らかっているんだ。

 

けどそんなのって、僕とヨシオが仲良くしない理由にはならないから気にしてない。

 

そんなこと言ったら、ヨシオはすごく絵を描くのが上手なんだ。

 

いつもノートの端っこに、ヒマワリの絵をかいてるんだ。

 

写真みたいに上手なんだ。

 

それに足だって速い。

 

僕なんかより全然速く走れるんだ。

 

だから僕はヨシオのことをすごいなって思う。

 

けど、ちょっとおかしいなって思うことは教えることにしてる。

 

おはようっておんなじ友達に言い続けたりするから

 

おはようが帰ってきたらまたねまで我慢だよって教えるし

 

掃除のときにいつも同じ雑巾を使おうと必死になるから

 

どの雑巾さんとも仲良くなろうねって教えたりする。

 

ヨシオに教えることはなんも嫌に感じないよ。

 

僕とヨシオは友達だからね。

 

けどそんなヨシオが3週間くらい学校に来なくなったんだ。

 

先生は、体調を崩しているからって言ってたから

 

ヨシオんちにお見舞いに行ったら

 

ヨシオのママが今日は会えないんだって言ってきた。

 

だから僕は毎日ヨシオの家に行ってたんだけどそれでも会えなかったんだ。

 

一人で寂しく登校する日が続いてて

 

僕のちょっと学校に行くのが詰まんなくなったころに

 

ヨシオが帰ってきたんだ。

 

何にも変わらないヨシオだったから安心した。

 

いつもみたいに二人で帰るようになったんだ。

 

きになったから最近何してたのか聞いたら

 

覚えてないってヨシオは答えるんだ。

 

覚えてないなら仕方がないから聞くのはやめたんだ。

 

次の日も二人で登校した。

 

またヨシオがおはようって何回もいうから

 

一回でいいんだよって教えたら思い出してくれた。

 

雑巾のことだってそうだ。

 

掃除が終わって5時間目は音楽だったんだ。

 

今日は僕たちの好きなリコーダーの授業。

 

楽しくてとってもワクワクする。

 

ヨシオはどうかなって隣を見たら、

 

ヨシオはリコーダーじゃなくてちくわをくわえていたんだ。

 

びっくりしたけどいつもの勘違いかと思って、

 

ヨシオにリコーダーはこっちだよと教えたんだけど

 

それでもまたちくわをリコーダー代わりにするもんだから

 

ちょっと面白くて、そのまま演奏させたんだ。

 

そしたらヨシオは、ちくわに穴を所々開けて

 

上手にエーデルワイスを演奏したんだ。

 

僕はびっくりして大きな声を出しちゃった。

 

そしたら、先生も他のみんなもこっちを振り向いちゃったんだ。

 

まずい、ヨシオが怒られちゃうって思ったから

 

先生!ヨシオはちくわでも演奏できるんです

 

っていってヨシオに吹かせたんだ。

 

タ~ラ~ラ~ タ~ラ~ラ~ タ~ラララララ~ラ~

 

ヨシオがあんまり上手に吹くもんだから、教室が拍手で包まれたんだ。

 

いつも僕が、それは良くないよって教えてたけど

 

今日は教えなくてよかったなって思ったんだ。

 

だって、おかげでヨシオがクラスの人気者になったから。

 

だれもばかになんかしていなくて

 

ヨシオのことをすごいって思ってるんだ。

 

ヨシオもうれしそうな顔をしてた。

 

僕もなぜだかうれしかった。

 

何日かして、ヨシオが転校することになった。

 

ヨシオのパパやママが転勤になったわけじゃないけど

 

ヨシオは、もっとヨシオみたいに素敵な友達が多い学校に行くみたい。

 

同じ学校じゃなくなるのはさみしいけど

 

家は近いからまた遊ぼうねって約束してまたねしたんだ。

 

ヨシオが転校しちゃった今でも

 

クラスのみんなで、ちくわのリコーダーに挑戦するけど

 

全然うまくできないんだ。

 

ヨシオはすごいなってみんな言ってるよ、ヨシオ。

 

ヨシオは今でも大切な親友だよ。